税理士や会計事務所を探していると、「TKC」という言葉を目にすることがあります。
「TKCって会計ソフトの名前?」
「TKCという会計事務所があるの?」
「普通の会計事務所とは何が違うの?」
このような疑問を持つ中小企業の経営者や個人事業主も少なくないでしょう。
TKCは、単に一つの会計ソフトを指す言葉ではありません。会計事務所の業務を支えるシステム、企業が利用する会計関連システム、それらを支えるクラウドやデータセンターなど、幅広い仕組みに関係しています。
そのため、「TKCとは何か」を理解するには、特定の製品だけを見るのではなく、会計事務所・企業・TKCのシステムがどのようにつながっているのかという全体像を押さえることが大切です。
この記事では、中小企業の経営者や個人事業主の方に向けて、TKCとは何なのか、会計事務所ではどのような仕組みで利用されているのかを、できるだけ専門用語を使わずに解説します。
TKCとは、税務・会計分野をはじめとする各種情報システムやサービスを提供している「株式会社TKC」の名称です。
株式会社TKCは1966年、栃木県宇都宮市で「株式会社栃木県計算センター」として設立されました。創業当初から、会計事務所と地方公共団体を対象とした情報処理サービスを主要な事業として発展してきた企業です。現在の商号である株式会社TKCへの変更は1972年に行われています。
現在では、会計事務所だけでなく、中小企業、中堅・大企業、地方公共団体、金融機関、法律分野などでもTKCのシステムやサービスが利用されています。株式会社TKCによれば、TKCシステムは11,600名を超える税理士・公認会計士と、全国60万社を超える企業に利用されています。
ただし、中小企業の経営者が「TKC」という言葉を耳にする場面では、多くの場合、税理士や会計事務所が利用している税務・会計システムや、顧問先企業が利用するシステムを含めた仕組みを意味しています。
そのため、
「TKC=一つの会計ソフト」
と考えるよりも、
「会計事務所と企業の税務・会計業務を支えるシステムや情報サービスの体系」
と捉えたほうが、実態を理解しやすいでしょう。
TKCについて初めて調べる方が混乱しやすいポイントが、「TKCは会計ソフトなのか」という点です。
TKCには企業が経理業務で使用する会計システムがあるため、「TKC=会計ソフト」という認識になることがあります。しかし、TKCが提供しているものは会計ソフトだけではありません。
株式会社TKCは、会計事務所向けに税務申告、会計、事務所管理などに関する複数のシステムを提供しています。一方、企業向けにも会計を中心として、給与計算、販売・購買管理などに関係する各種システムを提供しています。
つまり、企業側で使用する会計システムだけを見ていると、TKCの一部分しか見えていません。
会計事務所側には会計事務所側のシステムがあり、顧問先企業側には企業側のシステムがあります。そして、その間にデータを保管・処理するための基盤があります。
このように、複数のシステムが連携することで、税務や会計に関する一連の業務を支えているのがTKCの大きな特徴です。
では、会計事務所ではTKCをどのように利用しているのでしょうか。
分かりやすく考えるためには、
企業
↓
会計事務所
↓
TKCのシステム基盤
という三者の関係をイメージすると理解しやすくなります。
企業では、売上や仕入れ、経費、入出金など、日々さまざまな取引が発生します。
こうした取引に関する情報は、会計処理を通じて帳簿や決算書を作成するための基礎となります。
一方、会計事務所では、顧問先企業に関する会計・税務情報を取り扱いながら、決算や税務申告などの専門業務を行います。
TKCでは、こうした企業側と会計事務所側のそれぞれに対応したシステムが用意されています。
株式会社TKCの会計事務所向けシステムでは、関与先企業に関する情報を管理する仕組みや、税務申告などに利用する専門システムが提供されています。また、企業向けには会計を中心とした各種システムが用意されています。
つまり、TKCは「経営者が使う会計画面」だけで完結する仕組みではありません。
その背後には、会計事務所が専門業務で利用するシステムや、データを管理するためのインフラが存在しています。
TKCの仕組みを理解するうえで重要なのが、企業側と会計事務所側で使うシステムが分かれているという点です。
企業側では、日々の取引に関する会計データなどを扱います。
一方、会計事務所側では、顧問先企業に関する情報管理や、決算・税務申告などの専門業務に対応するシステムを利用します。
株式会社TKCも公式サイト上で、「会計事務所向けシステム」と「関与先企業向けシステム」を分けて案内しています。
ここが、TKCを単なる市販の会計ソフトとして理解すると分かりにくくなる部分です。
一般的に「会計ソフト」というと、会社が帳簿を作るためにパソコンやクラウド上で利用するソフトをイメージする方が多いでしょう。
TKCの場合、それだけではなく、企業側で扱う情報と会計事務所側の専門業務をそれぞれ支えるシステムが存在し、全体として税務・会計業務を支える構成になっています。
そのため、TKCについて考えるときは、
「どの会計ソフトを使うのか」
だけではなく、
「企業と会計事務所がどのような仕組みで会計情報を扱うのか」
という視点を持つことが重要です。
企業の会計業務では、売上、仕入れ、経費、預金、現金などに関する情報が発生します。
これらの情報が会計データとなり、最終的には試算表や決算書、税務申告などにつながっていきます。
TKCでは、企業向けシステムだけでなく、会計事務所側のシステムも用意されているため、それぞれの業務をシステム上でつなげながら処理できる環境が構築されています。
会計事務所向けの事務所管理システムでは、顧問先企業に関する情報を一元的に管理し、その情報をTKCの各システムと連携できる仕組みも採用されています。
また、一部のシステムでは、会計事務所側と企業側のデータをTKCのデータセンターを介して連携する仕組みも提供されています。
つまり、経営者から見ると会計画面だけが目に入りやすいものの、その裏側では複数のシステムや情報基盤が動いているということです。
TKCの仕組みを理解するうえで、もう一つ知っておきたいのがデータセンターの存在です。
株式会社TKCは、「TKCインターネット・サービスセンター(TISC)」と呼ばれる自社データセンターを運営しています。
このデータセンターを通じて、会計事務所や企業をはじめとする利用者向けに各種クラウドサービスが提供され、データの保管やシステム運用が行われています。
株式会社TKCによると、TKCシステムは会計事務所や企業、地方公共団体、金融機関、大学、法律事務所など80万件を超える顧客に利用されています。TISCでは、それらのシステムやサービスを支えるとともに、利用者のデータを保管しています。
近年は「クラウド会計」という言葉が一般的になっていますが、TKCでもネットワークやクラウド環境を利用したシステム提供が進んでいます。
そのため、TKCは「会計ソフトをパソコンに入れて使う」というだけの仕組みではなく、会計事務所、企業、データセンターなどがネットワークを介してつながる情報インフラとして見ることができます。
中小企業の経理を考える際には、「日々の会計」と「決算・税務申告」を別々のものとして考えてしまいがちです。
しかし実際には、日々記録している取引が帳簿になり、その帳簿をもとに決算書が作成され、さらに税務申告へつながっていきます。
つまり、
日々の取引
→ 会計データ
→ 決算
→ 税務申告
という流れは、本来一続きのものです。
TKCでは企業向けの会計関連システムだけでなく、会計事務所が利用する決算・申告関連システムも提供されています。株式会社TKCは、会計事務所向けに電子申告、法人税申告、所得税確定申告、相続税申告、年末調整など、税務実務に対応する複数の専門システムを提供しています。
この点からも、TKCは一つの会計ソフトというより、会計から税務までを扱う専門システムの集合体として理解したほうが分かりやすいでしょう。
経営者からすると、「会計事務所がTKCを使っている」と聞けば、「会計ソフトとしてTKCを使っている」という意味に感じるかもしれません。
しかし、会計事務所側から見ると、TKCはもっと広い範囲の業務に関係しています。
会計事務所では、一社だけではなく、多くの顧問先企業に関する情報を扱います。
顧問先ごとの基本情報、会計情報、決算情報、税務申告に関する情報などを適切に管理しながら、それぞれの期限に応じて業務を進める必要があります。
そのため、会計事務所向けのシステムには、単に仕訳を入力する機能だけではなく、顧問先企業の情報管理や税務処理など、専門業務に対応する機能が必要です。
TKCでは、こうした会計事務所の業務に対応する複数のシステムが提供されています。たとえば会計事務所向けの事務所管理システムでは、関与先企業の情報を一元管理し、TKCの各システムと連携する仕組みが用意されています。
その意味で、会計事務所にとってのTKCは単なる「計算ソフト」ではなく、日常業務を支える業務基盤の一つと考えると理解しやすいでしょう。
では、中小企業の経営者や個人事業主にとって、TKCはどのような存在なのでしょうか。
経営者自身が直接触れるのは、主に企業側で利用するシステムです。
しかし、そのシステムの背後には、会計事務所側で使用するシステムやTKCの情報基盤があります。
そのため、TKCを利用している会計事務所と契約している場合、「自社が使っている会計システムだけがTKC」というわけではありません。
企業側の会計処理から、会計事務所側の決算・税務処理まで、複数のシステムが関係する仕組みの中に自社の会計業務が位置付けられている、と考えると分かりやすいでしょう。
これは、TKCについて調べたときに多くの製品名やサービス名が出てくる理由でもあります。
それぞれがまったく独立して存在しているのではなく、企業側の業務、会計事務所側の業務、税務処理など、それぞれ異なる目的を担当するシステムとして構成されているのです。
TKCの歴史は、現在のようにクラウド会計が普及するはるか以前にさかのぼります。
株式会社TKCの創業者である飯塚毅氏は、1962年に米国で開催された世界会計人会議に出席し、コンピューターの発展を目の当たりにしたことをきっかけに、会計事務所向けの計算センター設立を構想したとされています。
その後、1966年に株式会社栃木県計算センターが設立され、1967年には「TKCトータルシステム」の基本構想が完成、1968年には財務システムの処理が開始されました。
つまり、TKCは近年登場したクラウド会計サービスではなく、コンピューターを利用して会計事務所の業務を支援するという発想を早い時期から発展させてきた企業です。
現在ではその仕組みがクラウドやデータセンター、各種専門システムへと広がっていますが、「ITを使って会計・税務の専門業務を支える」という基本的な位置づけは創業当初から続いているといえます。
TKCについて初めて知った方は、「会計ソフトの名前」と考えてしまうことがあるかもしれません。
しかし実際には、TKCは単一の会計ソフトではありません。
株式会社TKCは、会計事務所向けの税務・会計システムと企業向けの各種システムを提供し、それらをクラウドやデータセンターなどの情報基盤によって支えています。
そのため、中小企業の経営者がTKCを理解するときには、
企業が利用するシステム
会計事務所が利用する専門システム
それらを支えるTKCの情報基盤
という三つの関係を見ることがポイントです。
「TKCを使っている会計事務所」と聞いたときも、単に特定の会計ソフトを利用しているというだけではなく、その背後に税務・会計業務を支える複数のシステムがあると理解しておくと、全体像をつかみやすくなります。
会計事務所選びや会計システムについて検討する際には、まずこの基本的な仕組みを理解したうえで、それぞれのサービスやシステムの内容を確認していくとよいでしょう。