TKCについて調べていると、「自利利他(じりりた)」という言葉を目にすることがあります。
普段あまり使われない言葉だけに、
「自利利他とはどういう意味なのか」
「なぜTKCでは自利利他を大切にしているのか」
「税理士や会計事務所の仕事とどのような関係があるのか」
と疑問に感じる経営者や個人事業主の方もいるでしょう。
TKCにおける「自利利他」は、簡単にいえば、他者のために尽くすことが、自分自身の喜びや幸福にもつながるという考え方です。
ただし、単に「お客様に親切にする」「相手の希望を何でも聞く」といった意味ではありません。
税理士という専門家が、経営者や企業、従業員、社会にとって本当に望ましいことは何かを考え、専門家として責任ある行動をする。その積み重ねが相手の利益となり、結果として税理士自身の喜びや社会的な信頼にもつながっていく、という考え方です。
この記事では、中小企業の経営者や個人事業主の方に向けて、TKCの「自利利他」とはどのような考え方なのか、そしてTKC会計人がなぜこの理念を大切にしているのかをわかりやすく解説します。
「自利利他」という言葉だけを見ると、
「自分の利益と他人の利益を両方追求すること」
という意味に感じるかもしれません。
しかし、TKCで大切にされている考え方は、単純に「自分も得をして、相手も得をする」という意味ではありません。
他者のために力を尽くすことと、自分自身の利益や幸福は別々のものではないという考え方です。
たとえば、税理士が顧問先企業のために真剣に考え、専門家として必要な助言を行った結果、その企業の経営がより良い方向へ進んだとします。
経営者に喜んでもらい、企業が成長し、従業員の生活が安定する。
その結果として税理士も経営者から信頼され、仕事にやりがいを感じることができます。
「まず自分が利益を得て、その一部を相手に与える」という発想ではありません。
相手のために本気で行動すること自体が、自分自身の喜びにつながっている。
これが、TKCにおける自利利他を理解するうえで重要なポイントです。
税理士は、経営者から非常に重要な情報を預かる仕事です。
会社の売上や利益はもちろん、資金繰りや借入金、給与、取引状況など、一般には公開されない情報に触れる機会も少なくありません。
だからこそ、税理士には知識だけでなく、高い職業倫理や使命感が求められます。
税理士が自分の都合だけで仕事をしてしまえば、本当の意味で経営者の力になることはできません。
一方で、経営者から言われたことを何でも受け入れればよいわけでもありません。
場合によっては、
「それは会社のためになりません」
「その処理は適切ではありません」
「短期的には得に見えますが、長期的にはリスクがあります」
と伝えなければならないこともあります。
経営者にとって耳の痛い内容であっても、企業の将来を考えて必要なことを伝える。
こうした姿勢も、自利利他の考え方につながっています。
自利利他という理念を、中小企業経営者の立場からもう少し具体的に考えてみましょう。
経営では、どうしても目の前の利益に意識が向きがちです。
「今期の税負担を少なくしたい」
「できるだけ費用を抑えたい」
「面倒なことは後回しにしたい」
と考えること自体は珍しくありません。
しかし、短期的には得に見える判断が、長期的には企業の信用や安定性を損なうケースもあります。
自利利他の考え方では、その場だけの得ではなく、相手にとって本当に望ましい結果は何かを考えます。
TKC会計人にとって重要なのは、経営者にその場で喜ばれることだけではなく、企業が将来にわたって健全に事業を続けていくために何が必要かを考える姿勢だといえるでしょう。
経営者と税理士では立場が異なります。
そのため、ときには意見が一致しないこともあります。
しかし、本当に相手のことを考えるのであれば、必要なことを伝えないという選択はできません。
数字から問題が見えているにもかかわらず何も言わない。
明らかなリスクがあるにもかかわらず指摘しない。
こうした対応は、一時的には経営者との摩擦を避けられるかもしれませんが、長期的には企業のためにならない可能性があります。
自利利他を実践するのであれば、ときには相手にとって聞きにくい内容でも、専門家として必要なことを伝える姿勢が重要になります。
税理士と経営者の関係は、一度だけ相談して終わるものとは限りません。
企業活動が続く限り、さまざまな判断が必要になります。
だからこそ重要になるのが信頼関係です。
経営者が、
「この人は自分の事務所の利益だけを考えているのではない」
「会社のことを真剣に考えてくれている」
「都合のよいことだけではなく、必要なことを言ってくれる」
と感じられる関係になれば、より本質的な相談もしやすくなります。
自利利他という理念は、そのような長期的な信頼関係を築くための土台となる考え方でもあります。
自利利他は、税理士だけの考え方ではありません。
中小企業の経営者や個人事業主にとっても、参考になる部分があります。
事業は、自社だけで完結するものではありません。
商品やサービスを購入してくれる顧客がいて、商品を仕入れる取引先がいて、働いてくれる従業員がいます。
周囲との関係がなくなれば、事業を続けることもできません。
そのため、長く続く企業ほど「自社だけが得をすればよい」という経営から離れていく傾向があります。
たとえば、
顧客にとって価値のある商品やサービスを提供する。
従業員が安心して働ける環境をつくる。
取引先と適正な関係を築く。
地域や社会から信頼される経営を行う。
こうした取り組みは、一見すると相手のための行動です。
しかし、顧客から選ばれ、従業員が定着し、取引先から信頼されるようになれば、最終的には会社自身の利益にもつながります。
これはまさに、自利利他に通じる発想といえるでしょう。
自利利他という言葉を聞いて、「顧客第一と同じではないか」と感じる方もいるかもしれません。
似ている部分はありますが、自利利他はもう少し広い考え方として捉えることができます。
顧客第一という表現は、一般的には顧客の満足や利益を優先するという意味で使われます。
一方、自利利他には、他者の利益を実現すること自体が、自分自身の喜びや幸福につながるという発想があります。
つまり、
「お客様を大切にすれば、結果として自社も儲かる」
という単純な交換条件ではありません。
「相手のためになる仕事そのものに価値を見いだす」というところに、自利利他の特徴があります。
もう一つ誤解しやすいのが、
「自利利他とは、自分を犠牲にして相手に尽くすことなのか」
という点です。
自利利他は、単なる自己犠牲とは異なります。
自分が苦しみ続けながら相手だけを満足させるという関係では、持続することができません。
事業者同士であれば、適正な対価を受け取りながら、相手に価値を提供することが必要です。
税理士も仕事として専門サービスを提供しています。
専門知識を身につけ、人材を育成し、事務所を運営していくためには、当然ながら適正な収益も必要です。
重要なのは、
「自分の利益か、相手の利益か」
という二者択一で考えないことです。
相手の成功や幸福につながる仕事をする。
その結果として信頼や評価を得て、自分自身も成長し、仕事を続けていくことができる。
この循環こそ、自利利他を現代のビジネスに置き換えて理解する際のポイントです。
TKCについて初めて知る経営者にとって、「自利利他」は少し難しい言葉に見えるかもしれません。
しかし、意味をシンプルにすると、
「相手のために本当に役立つことを追求することが、自分自身の喜びや価値にもつながる」
という考え方です。
この考え方を知っておくと、TKC会計人がなぜ職業倫理や使命感を重視するのかも理解しやすくなります。
単に依頼された仕事を処理するだけではなく、
「この企業にとって本当に望ましいことは何か」
「専門家としてどのように行動すべきか」
「社会から信頼されるためには何を守るべきか」
を考え続ける。
自利利他は、その判断の根底にある理念の一つです。